【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第九十三回】 [ノモンハン考]
☆前々回、「7月7日の戦車戦」を、渡河作戦でのハルハ側西岸の話だと書きましたが、今、ちょっと出先で資料が近くにないのですが、7月7日においては、渡河作戦は撤収していたような気がしています。
後日、確認することにします。
しかし、私は、出先にも、こうして本を持参して、更新するなんて偉いですよね^^
では、『ノモンハン :地を這う神々の境地』です。
なお、「地を這う神々の境地」は、『ノモンハン美談録(満州国書株式会社)』の転載ですが、最近、日本教育再生機構の会報が届き、それには、渡部昇一氏の「美談を伝えよう」と言う文章が載っていました。
ノモンハンの美談は任せてください!
◇ ◇
第二十六柱 陸軍伍長 <池目 忠男>
「銃側に輝く大和魂」
「小隊長殿、前方六百米に敵戦車が現れましたツ」
監視兵の力強い声が、銃砲声の中に凛として響きわたつた。すはこそ、好敵ござんなれと、全員は一斉に配備についた。機関銃射手の池目上等兵も、指先を引金にかけ、らんらんたる眼で敵戦車を睨んだ。
「まだまだ早い。射つなツ」 隊長の落付き払った声が流れてくる。
見る見るうちに敵戦車は、二両、三両、四両 遂に十数量を数え、凹地伝ひに猛然と押寄せて来た。砲塔からは物凄い戦車砲弾、重機弾が火を吐いて飛んでくる。わが重機は一斉に銃口を敵に向け、じつと固唾を呑んで隊長の号令を待つてゐる。
いよいよあと四百米。
「よし、射てツ!」 号令一下、待ちかまへた各重機は、ここぞとばかりに火蓋を切つた。
見よ! 我が弾着の正確さを! 小気味のよい音を立てて、一弾の無駄もなく敵戦車に命中するのだ。敵はこの猛撃に恐れをなしたか、慌てて矛を転じて、凹地の中へ逃げこんでしまつた。
が、敵もさるもの、ひそかに我が陣地の側方を迂回して、後方から襲撃せんとした。早くも、敵の意図を見抜いた隊長は、
「中隊直轄重機は、○○方向陣地転換」と、大声に名を下した。
敵前の陣地転換は、一刻を争ふのだ。池目上等兵は、射手を助けつつ、砂のざらざらと崩れる丘の上へ、必死となつて重機を引き上げた。したたる汗が砂と一しよに目に沁みこむが、こすつてゐる間もない。前面には早や敵戦車の姿が大きく現れた。
「直轄重機は左後方の戦車、射てツ!」
隊長の号令もろとも、池目上等兵は、銃身も焼けよとばかりに、射ちまくる 。敵戦車は忽ち我が猛火に射すくめられて、一箇所に停止してしまつた。「今こそ!」とばかりに上等兵は、すばやく保弾板二連を装填、まさに、連続射撃に移らんとした一刹那、がくりと重機の上に突伏してしまつた。
「池目、どうしたツ!」 分隊長が駆け寄つて抱き起さうとすると、上等兵の脇下から、鮮血が噴き出てゐる。敵の散弾に、胸部を貫かれたのだ。
しかし見よ、上等兵は尚も銃をしつかと握りしめたまま、戦車を睨んでゐるではないか。しかも銃口からは、引続き火を吐き、敵戦車の司令塔に凄じい音をたてて命中してゐるのだ。瀕死の重傷を受けながら、あらん限りの力をもつて、今こそ最期の猛射を浴せかけてゐるのだ。この尊き姿、この旺盛なる攻撃精神。 鬼といはれた分隊長の胸に、ぐつと熱いものがこみ上げて来た。
「池目! おい池目。ありがたう」 分隊長は上等兵の肩に手をかけ、涙にふるへる声で叫んだ。
その時、二連の保弾板を残りなく射ち終つた上等兵は、満足さうにほほ笑みつつ、
「天皇陛下万歳」と、途切れ途切れ叫びながら重機の上にがつくりと低頭れて息が絶えた。
が、上等兵の最期の猛射は、遂に敵戦車を完全に制壓し、一歩も近寄せなかつたのである。
◇ ◇
・・・「二連の保弾板」とは何だろう。
機関銃の弾薬のベルト状のものだろうか?
(2008/10/12)
後日、確認することにします。
しかし、私は、出先にも、こうして本を持参して、更新するなんて偉いですよね^^
では、『ノモンハン :地を這う神々の境地』です。
なお、「地を這う神々の境地」は、『ノモンハン美談録(満州国書株式会社)』の転載ですが、最近、日本教育再生機構の会報が届き、それには、渡部昇一氏の「美談を伝えよう」と言う文章が載っていました。
ノモンハンの美談は任せてください!
◇ ◇
第二十六柱 陸軍伍長 <池目 忠男>
「銃側に輝く大和魂」
「小隊長殿、前方六百米に敵戦車が現れましたツ」
監視兵の力強い声が、銃砲声の中に凛として響きわたつた。すはこそ、好敵ござんなれと、全員は一斉に配備についた。機関銃射手の池目上等兵も、指先を引金にかけ、らんらんたる眼で敵戦車を睨んだ。
「まだまだ早い。射つなツ」 隊長の落付き払った声が流れてくる。
見る見るうちに敵戦車は、二両、三両、四両
いよいよあと四百米。
「よし、射てツ!」 号令一下、待ちかまへた各重機は、ここぞとばかりに火蓋を切つた。
見よ! 我が弾着の正確さを! 小気味のよい音を立てて、一弾の無駄もなく敵戦車に命中するのだ。敵はこの猛撃に恐れをなしたか、慌てて矛を転じて、凹地の中へ逃げこんでしまつた。
が、敵もさるもの、ひそかに我が陣地の側方を迂回して、後方から襲撃せんとした。早くも、敵の意図を見抜いた隊長は、
「中隊直轄重機は、○○方向陣地転換」と、大声に名を下した。
敵前の陣地転換は、一刻を争ふのだ。池目上等兵は、射手を助けつつ、砂のざらざらと崩れる丘の上へ、必死となつて重機を引き上げた。したたる汗が砂と一しよに目に沁みこむが、こすつてゐる間もない。前面には早や敵戦車の姿が大きく現れた。
「直轄重機は左後方の戦車、射てツ!」
隊長の号令もろとも、池目上等兵は、銃身も焼けよとばかりに、射ちまくる
「池目、どうしたツ!」 分隊長が駆け寄つて抱き起さうとすると、上等兵の脇下から、鮮血が噴き出てゐる。敵の散弾に、胸部を貫かれたのだ。
しかし見よ、上等兵は尚も銃をしつかと握りしめたまま、戦車を睨んでゐるではないか。しかも銃口からは、引続き火を吐き、敵戦車の司令塔に凄じい音をたてて命中してゐるのだ。瀕死の重傷を受けながら、あらん限りの力をもつて、今こそ最期の猛射を浴せかけてゐるのだ。この尊き姿、この旺盛なる攻撃精神。
「池目! おい池目。ありがたう」 分隊長は上等兵の肩に手をかけ、涙にふるへる声で叫んだ。
その時、二連の保弾板を残りなく射ち終つた上等兵は、満足さうにほほ笑みつつ、
「天皇陛下万歳」と、途切れ途切れ叫びながら重機の上にがつくりと低頭れて息が絶えた。
が、上等兵の最期の猛射は、遂に敵戦車を完全に制壓し、一歩も近寄せなかつたのである。
◇ ◇
・・・「二連の保弾板」とは何だろう。
機関銃の弾薬のベルト状のものだろうか?
(2008/10/12)
2008-10-12 21:42
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下のページの、
http://www13.ocn.ne.jp/~seiroku/heisentou1.html
「実包 火薬」の項目に紹介されている写真3つの右側に、
保弾板が紹介されています。
使用の状況は、以下が参考になるかと思います。
http://shanxi.nekoyamada.com/archives/000217.html
by MUTI (2008-10-16 00:06)
>>MUTIさんへ♪
有難う御座います^^
満更、私がイメージしていたものも間違っていなかったのですね。
しかし、「二連」と言うのは、かなりの攻撃力を擁しますね。
今、村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」を読んでいるのですが、ノモンハンが出て来ているのですよね。
さて、村上春樹の見方はどうなのでしょうか?
by 想像湧水 (2008-10-16 20:44)