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【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第八十八回】 [ノモンハン考]

☆では、『ノモンハン :地を這う神々の境地』です。

   ◇   ◇

 第二十三柱 陸軍伍長 <伊地知 忠士>

    「気魄で引く引金」

 一時退却した敵は、又もや八両の戦車と装甲車をつらねて正面から逆襲してきた。車軸を流す豪雨のやうに、戦車砲弾、機関銃弾をあびせてくる。

「射てツ、最後まで射てツ!」 分隊を指揮しながら、自分も懸命に射撃してゐた伊地知上等兵が、突然、

「しまつた!」と叫んで倒れた。左大腿部を敵弾が貫通したのだ。が、強気の上等兵は、部下が誰も気づかないうちにすぐ起上がつて、歯を食ひしばりながら射撃をつづけてゐた。

 が、一分とたたない間に、第二弾が左胸部を貫いた。思はず前のめりになつて、がつと口から血を吐いた。その血が胸から腹へと伝はつて、全身血だるまとなつた。

 だが、彼はそれでも屈せずに銃を握つて応戦してゐた。

 戦友の一人が見かねて駆けよつてきた。

「伊地知上等兵、後退しろ」 肩を抱いて連れ戻さうとしたが、上等兵はその手をふり払つて、

「何ツ、俺はこれから戦闘するんだツ!」と、血みどろの手を引金にあてて一発発射した。

 その瞬間、憎むべき敵の第三弾は、照準のためにつぶつてゐた上等兵の左眼に発止と命中した。

「ざんねん!」 さすが鬼をもひしぐ気魄の上等兵も、ノモンハンの華と散つたのである。

   ◇   ◇

大戦時代の記録を読むと、「伊地知」と言う姓の方が度々活躍している。

東京に住んでいる私には、馴染みのない姓である。

明治維新の頃から歴史の表舞台に出てきた薩摩や長州ではメジャーな名字なのでしょうか?

                                                  (2008/09/07)
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