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【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第九十六回】 [ノモンハン考]

☆まだ、分からないんですけど、もうすぐ、来年のノモンハン事件70周年記念に向けて、ちょっとしたイベントを行なえると思います^^

 ・・・では、『ノモンハン :地を這う神々の境地』です。

   ◇   ◇

 第三十一柱 陸軍上等兵 <伊藤 正五郎>

    「身を以って機関銃を庇ふ」

 七月二日以来、敵機械化部隊を向ふに廻し、わが機関銃隊は激戦を重ねてゐたが、蒙古原野で機銃の射線は砂塵がはいつて、よく故障を起すのであつた。

 伊藤一等兵は、射手として、いつも砂塵の予防いろいろと心をくだき、すこしの暇があると手入れを行ひ、射撃の万全を期してゐた。

 七月二十七日のことである。たまたま敵砲弾が銃側に炸裂し、自分も身に数箇所の負傷を負ふと共に、機銃も損傷をうけた。彼は、自分の傷どころではない。一大事とばかり直ちに機銃を分解して鮮血にまみれながら修理をつづけ、完全に直すと再び射撃を始めた。

 と、又も敵砲弾がうなりを生じて一等兵の身近に落下した。一等兵は、わが子を庇ふ慈母のやうに、素早く機銃を腹の下に抱きよせたが、その瞬間、砲弾は轟然と炸裂、破片は雨のやうに一等兵を襲ひ、そのまま壮烈な戦死をとげてしまつた。

 戦友は駆けつけて抱き起さうとしたが、機銃をしつかと抱きしめてゐる崇高な最期を見ると、彼等は雷光をうたれたやうに立ちすくんだ。そして彼等は口々に彼の真面目をたたえた。

                                       (2008/11/09)
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