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【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第百六回】 [ノモンハン考]

☆久々の更新ですいません^^;

 「ノロ高地」について資料を読んでいたら、その多量の情報に混乱してきて、スランプに陥ってました。

 とりあえず、70年前の今月、ノモンハン事件は始まっています。

 ともかく、書けることを書きます。

 ・・・では、『ノモンハン :地を這う神々の境地』です。

   ◇   ◇

 第四十柱 陸軍中尉 <畠中 三次郎>

    「一心協力爆弾自動貨車を動かす」

 機銃弾、手榴弾を満載した自動貨車が第一線に向つて走つて行く弾丸補給の重大任務を帯びて、それに乗つてゐるのは畠中中尉と、操縦手の迫一等兵である。

 由来危険なことの形容に「爆弾を抱いて走る」といふ言葉があるが、これは形容ではない、文字通り正に爆弾と共に往くのである。しかも敵弾雨飛の間を縫つて往くのである。もし一弾がそれを掠めたら、全弾が一度に火を吐いて、トラツクもろともふつとんでしまふにきまつてゐる。だから戦場でのこの役は、危険中の危険、決死中の決死の仕事なのである。草原の間、あちこちに散在する凹地を巧みに避けて、自動貨車はハルハ河畔近づいていつた。

「敵に見つかつたらしいぞ」

 敵弾が次第に近くへ落ちてきたのである。

 一等兵はわざと速力を出したり、右に左にうねつたりくねつたりしながら、進んでいつた。敵弾は進んでゆくうしろへと落ちた。

 中尉は前方からじつと目を離さない。そこには硝煙が暗く天を覆うて撒き上がつてゐる。戦は酷だ。

「前線ではどんなに我々を待つてゐるだらう」 中尉は思はずつぶやいた。心は矢竹にはやるが、この悪路と、この敵弾をどうしよう。と、考えてゐる時車は凹地の湿地の中へ落ち込んだ。車体は一寸動きさうにもない。

 中尉はひらりととびおりたが、ヅカヅカと凹地の湿地の中へはいり込んで、車体に手をかけた。

 一等兵の操縦に呼応して、中尉はあらん限りの力をふるつて車を押した。たつた二人でも、一心は恐しい、協力は尊い。トラツクはゆらゆらとゆらぎ出して、とうとう凹地から抜け出たのである。勇躍トラツクへとび乗つた中尉の姿はまるで泥人形である。

 再びトラツクが勢ひよく走り出したが、やがて突然   中尉はうしろへのけぞつた。

 一等兵がふりかへつて見ると、胸から鮮血がふき出してゐる。肩に手をかけると、かすかな声が唇から洩れてきた。

「本望……本望」 途端に声が声が絶えたのである。

 一等兵は中尉の無事を念じつつ。再びハンドルを握ると、車は弾丸と、重傷の中尉を乗せて走り出した。

 一日千秋の思ひで待つてゐた第一線では、重傷の中尉の姿に熱き感激の涙をそそぐと同時に欣喜雀躍、暴戻ソ軍撃退へと邁進したのだつた。

   ◇   ◇   ◇

 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の『恐怖の報酬』を思い出さされる、今回の戦記でした。

                                                       (2009/05/12)
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【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第百五回】 [ノモンハン考]

☆・・・では、『ノモンハン :地を這う神々の境地』です。

   ◇   ◇

 第三十八柱 山縣部隊 <飯田小隊>

    「短剣にて敵中に突入」

 八月二十四日以来、要衝「ノロ高地」を占領中だつた大隊は、いつのまにか、敵狙撃兵二個師団、戦車装甲車数百両の大軍に包囲され、孤立に陥つてしまつた。

 この時、中隊指揮班東方四百米の地点死守を命ぜられたのは、飯田機関銃小隊であつた。

 越えて八月二十六日    兵たちが一升瓶と呼んでゐる十五糎榴弾を初め各種の敵砲弾は、相変らず雨霞と降り注いでゐる。その中で監視中だった一射手は、ふと、糧秣運搬の敵自動車一両が、我が陣地前を進行してゐるのを発見した。

 その報告をうけた飯田小隊長は、部下を指揮して敵自動車ができるだけ近距離に近づくまで待機せしめ、陣地前約六十米まで進んできた時、

「射て!」 号令一下、部下は忽ち敵自動車に向つて強襲火を浴びせかけた。

 不意を喰つた敵運転手及び乗員十五名は、見る間にバタバタと倒れ、全滅してしまつた。

 と、間もなく、今度は地形偵察の敵軽装甲車が一両現はれ、前に叩きのめされた自動車と乗員を発見、その死体を収容しようと敵兵が下車したところを、これまた猛射を送つたので、慌てふためいた敵は二名の死傷者をうち棄てて闘争してしまつた。

 翌二十七日の未明、敵はまたまた重戦車六両、狙撃兵約二百名を以つて、小隊の陣地に逆襲してきた。

 隊長は部下に命じて、なるべく味方の陣地を敵にさとられないやうにして待機せしめたが、敵は小隊陣地に向つて、盛んに重砲、戦車砲、機関銃の集中火をあびせ、大膽にも二十米の地点まで迫つてきた。

 この時、戦車の後方にあつたソ軍自慢の狙撃兵約百五十名が、突如、手榴弾を投げながら、

「ウラー、ウラー!」と喊声をあげて突撃してきた。

 が、突撃は皇軍が本家だ。われもまた手榴弾を提げて勇躍応戦、ここに凄じい手榴弾戦が展開された。

 炸裂また炸裂・・・・・・我が方にも敵手榴弾に倒れる者があつたが、敵は更に多数を倒され、初めの勢ひはどこへやら、多数の兵器と死体を棄てて敗退してしまつた。

 残員わづか九名の小隊は、全くの苦戦に陥り、今は全滅を覚悟するほかなくなつた。

「全滅を期して突撃ツ!」

 飯田小隊長は、悲壮な号令を下し、自ら真っ先に白刃を揮つて敵中に突入した。全員も右手に帯剣をひき抜き、左手に手榴弾を握つて、ワーツとばかり突つ込んだ。

 中にも、加藤美利太郎上等兵をはじめ二名の兵は、大胆不敵にも敵の背後に廻りこみ、阿修羅の如く短剣をふり廻して、当るを幸ひ斬りまくつた。

 その気迫に圧倒されたか、さしもの敵兵もつひに多数の兵器、死体を遺棄して潰走してしまつた。

 が、加藤上等兵は、側面から集中した戦車砲弾のために、つひに壮烈な戦死を遂げた。

「加藤、・・・・・・見ろ、敵は撃退されたぞ!」

 奇跡的に生き残つた隊長初め戦友たちは、倒れた部下戦友を抱き起して、涙の報告をしたのであつた。

 わづか九名の機関銃小隊が、白兵戦に於てかくも大殊勲をたてた勇猛さ    これこそ皇軍の真髄を発揮したものである。

   ◇   ◇

 パワフルな描写は赤字にしてみました。

 「ノロ高地」と「山縣部隊」については、次回に書きます。

 現在の常識で考えると、戦争における「過酷」な状況を赤字にして強調するなど、不謹慎なように思う方もいるかもしれないが、戦争について自らの体験として考えたり、こうして、先頭記述の「写経」の如き行いをしていると、次第に自分の中に、実体験をした軍人たちの、数パーセントに過ぎないのだろうが、その思いが理解できてくるのだ。

 「戦争」を悲惨事ではなく、「勝負ごと」とさえ感じていた時代の空気を得られたとき、

 私は、「短剣をふり廻して、当るを幸ひ斬りまくつた」などという表現に快哉を叫ぶのだ。

 軍人は、「少年ジャンプ」のバトルマンガのヒーローの如き扱いをされていた時代なのである。

                                                (2009/02/27)
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【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第百四回】 [ノモンハン考]

☆・・・では、『ノモンハン :地を這う神々の境地』です。

   ◇   ◇

 第三十七柱 陸軍上等兵 <石尾 眞人>

    「進んで難局を志願」

「伝令!」 「はツ」

 中隊長の声に応じて、すぐさま飛び出すのは、いつも石尾一等兵だつた。

「うむ、では御苦労だが・・・・・・前面の敵、先刻来戦車三両、狙撃兵数百をもつて南方高地に向つて進出の模様あり、以上小隊長に伝令!」 復唱するや否や、石尾一等兵は敢然と稜線の上へとびだした。とたんに、敵戦車の機関銃が猛烈に火をふいて、石尾一等兵のあとを追つてゆく。

「うむ、元気な奴ぢやなあ、弾丸に当らないやうに」

 中隊長は頼もしげにその後姿を見送りながら祈るのだつた。

 それは七月五日、我が全線に亙つて総攻撃が開始され、敵はもうあと一押しでハルハ河の彼方に追ひはらはれるといふ時である。中隊は約八百米の前方に敵陣を睨んで猛攻してゐたが、敵の勢はつねに変化するので、右方の小隊との連絡が何より重要だつた。

 だが、戦車数両をもつて陣地を固めた敵は、稜線の上に一人でも姿を出せば、忽ち機関銃の集中射撃を浴せてくるので、その連絡の任務は九死に一生を覚悟せねばならぬ決死の難事だつた。

 しかも、石尾一等兵はいつも自ら進んで伝令を志願し、許されれば大喜びで敵弾集中地帯にとびだし、敏速かつ確実に任務を果たすのである。

 その昔、戦場に馳驅して矢叫びに胸をどらせた祖父の血が、若い石尾一等兵の全身に今なほ脈うつてゐるのでもあらうか、戦場に来てからの彼は元気百倍したかの如く、どんな困難な仕事にも飛びつくやうに働くので、戦友たちはみんな舌を捲いてゐたのである。

 敵の弾丸もこの元気者は避けて通るかのやうだつた。

 ところが、その翌六日、中隊が長驅して敵の左側背を衝いた時、石尾一等兵も中隊長側で次々と敵を射殺してゐたが、十三時ごろ、つひに敵弾を頭部にうけて、壮烈な戦死をとげたのであつた。

   ◇   ◇

                                         (2009/02/08)

【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第百三回】 [ノモンハン考]

☆数ヶ月前に買った本で、買ったまま忘れていたのだが、部屋から「発掘」されたので読んだ。

          090206_182603[1] (2).jpg
             『戦前の日本 (武田和弘著・彩図社)』

 いかにも「戦後(日教組教育下)」の語彙が使われているが、コラム風に軽快に書かれた文章で、とても読みやすく、私にとっては勉強になった。

 ノモンハン絡みでは、往年の名投手スタルヒンが、ノモンハン事件の勃発の後に「須田博」と改名させられたことや、

 明治の末期に起こった「株ブーム」は、南満州鉄道株の熱狂にはじまったことなどがさりげなく記されていて面白かった。

 また、昭和一桁時の「貿易摩擦」で、イギリスの圧力で、インドへの紡績輸出市場から締め出された日本が、満州経営に力を入れていくことが、先の大戦の遠因になったことも書かれていた。

 ・・・では、『ノモンハン :地を這う神々の境地』です。

   ◇   ◇

 第三十六柱 陸軍上等兵 <池田 兼行>

    「死ぬまで防毒面を握る」

「かうなつたからには白兵戦だ。みんな敵の近づくのを待てツ!」

 陣之内上等兵が怒鳴つたので、池田一等兵も、じつと敵の接近するのを待つた。

 その日早朝からの激戦で、絶え間ない砲煙に覆はれながら、池田一等兵等の小隊は最後まで頑強に戦つてゐたが、ふと気がつくと、いつの間にか、池田一等兵等七名は小隊の主力から離れて、数十倍の敵の真只中にはまり込んでしまつてゐたのだ。

 我が方を寡勢と見た敵は、図にのつて銃火を浴せながら、ジリジリと包囲網をちぢめてきた。もうかうなつたら、白兵戦で行くよりほかなかつたのである。

「いいか、小隊の主力の方向に向つて行くんだぞ!」 また、陣之内上等兵が叫んだ。

「よし来たツ!」

 六人の戦友が答へる。

 ひつきりなしに射つてくる敵の小銃弾は七人の目の前に、パツパツと小さな砂煙をあげた。六人は銃剣を握つたまま、豹のやうに身構へてゐた。

 突然、池田一等兵が、

「やられたツ」

 と叫んで、ドウと倒れた。

 ハツとして六人の戦友が振返ると、池田一等兵は血潮を吹きながら、

「お、お、おれは、もう駄目だ。みんなしつかりやつてくれ!」

「そんな弱いことを云ふな。もう少しだから頑張れ」

 すると、池田一等兵は、苦しげに身もだえしながらも、咄嗟に防毒面を肩からはづして、陣之内上等兵に渡しながら、

「こ、これを、埋めてくれ」

「た、たのむぞ・・・・・・おい、みんな・・・・・・永いあひだ世話になつた。有難う。・・・・・・、みんな、うまく部隊に帰つてくれよ・・・・・・成功を、祈るぞ」 云ひながら、呼吸は次第に細くなつて行つた。

 臨終の際まで、防毒面を敵に渡すまいと念じ、戦友の無事脱出を祈るその床しい心根に、戦友たちは思はずグツと胸を衝かれて、涙ぐんでしまつた。

   ◇   ◇

 ・・・なぜ、防毒マスクを必要としたかは、後日、記すことになりましょう。

                                                      (2009/02/06)

【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第百ニ回】 [ノモンハン考]

☆文中に「糧秣自動車」と言うものが出てくるが、私は、その「糧秣」の意味がわからなかった。

 <兵員の食糧と軍馬のまぐさ>だそうだ。

 つまり、食糧運搬車のことらしい。

  ◇   ◇

 第三十五柱 陸軍上等兵 <井前 正雄>

    「戦車もろとも散華」

「分隊長殿、戦車六両、糧秣自動車三両、前方百米を右から左へ・・・・・・」

 低い声だが、もう殺気に充ちてゐる、射手の井前一等兵である。二十時と云つてもこの蒙古の大草原ではまだ暮れかけといふ明るさだつた。

「よし、糧秣自動車を覘へ」

「はつ・・・・・・」 けたたましく一連発射し終ると、そのままサツと頭をひつこめた。

 たしかに手応へがあつた。がもう一連発しようと手早く装填して、覘ひをつけると、敵は何と思つたか、傷ついた一両を残して、全速力で逃げ始めた。

「なんのこつた、臆病者め」 張合ひぬけがした井前一等兵は、

「分隊長殿、ちよつと御馳走を分捕つてきますよ」と銃座を離れた。

「よせよ、危いぞ」 「なーに、大丈夫です」

 ソロリと壕から匐ひだした一等兵は、すばしくこく草の深い凹地つたひ、夕闇にまぎれて敵自動車の方へ近寄つて行つた。

 見ると、敵兵が二人、しきりに車体の故障を点検してゐる。

 豪胆な井前一等兵は、腰の短剣を引抜くと見る間に、いきなり飛びかかつてグツと一突き。それを引抜きざま、他の一人を横なぐりに殴りつけ、ひるむところを又一突き・・・・・・アツといふ間もない早業である。

 そこへ一人の戦友が心配して駈けつけたのを見ると、

「さあ、持てるだけ持つてくれ」と、パン、野菜、缶詰、砂糖などをポケツト両手に一ぱいかかへて、ニコニコしながら引揚げてきた。

「オーイ、食物ができたぞツ!」

 丁度現在地に来て二日間になるので食ふ物に気を配つてゐた激戦中のこととて、戦友たちは大喜び、たらふく食つて勇気百倍その勢ひでつひに敵を撃退してしまつた。

 ところが、その後まもなく、敵は口惜しまぎれに十数両の戦車をつらねて、復讐にやつてきた。

「何ツ、そんなものが怖いか!」

 機関銃では手ぬるしと見た井前一等兵は、単身、戦車地雷を二つかかへて飛出し、荒れ廻る一両の戦車にとびついた。

 轟然たる爆音! 敵戦車は見事粉砕された。が、同時に、井前一等兵の体も粉々に吹きとばされ名誉の戦死を遂げ国境守護神と化したのだつた。

   ◇   ◇

 一連の「ノモンハン美談」を読んでいくと、タイトルの人物の階級が、文章中のものより、上位になっていることが多い。

 戦死による「階級特進」なのだろう。

 上記の引用では、突然の死でショッキングだが、井前上等兵には陽性が感じられ、私のイメージとしては、『封神演義』で死んだ仙人が封神台にピューンと飛んで行くように、亡くなった井前上等兵が、ピューンと靖国神社に飛んで行ったかの様な思いがよぎるのである・・・。

                                              (2009/02/05)

【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第百一回】 [ノモンハン考]

☆月曜日は仕事が忙しいのだけども、「第百回」で<高射砲>について書き、その、ノモンハンにおいて使用された<高射砲>がどのようなものか分かったので、その写真だけでも転載しておく。

 私がよく引用する『ノモンハン戦車戦(マクシム・コロミーエツ著/大日本絵画)』をパラパラと眺めていたら発見できた。

   高射砲.jpg

 「九八式20mm高射機関砲」だそうだ。

 う~む、しかし、これでは、あまりにもイメージが違う・・・。

 小振りすぎる。

 これでは、機関銃に毛が生えた程度ではないか。

 とうてい、戦車は撃ち抜けまいぞ。

 でも、キャプションで、「ノモンハン戦では、対戦車砲として使用された」とあるんだよなあ・・・。

                       (この項、続く 2009/01/26)

【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第百回】 [ノモンハン考]

☆昭和59年の中央公論の増刊『歴史と人物』は、特集でノモンハンに詳しい。

 ノモンハンでは、日本の以前以後に例のない大砲兵戦が行なわれたのだが、

 伊藤桂一氏がエッセイの中で、こう述べていた。

   
≪・・・対戦車戦については、速射砲のほか、連隊砲もよく戦って戦火を挙げている。高射砲は水平射撃をすると高射砲としての機能が駄目になるのだが、敵戦車があまりにも多いので、遂には対戦車砲としてこれを使用したが、長い砲身、扱いにくい操作ながら、やはり多くの戦火を挙げた、ときかされたことがある。思う念力戦車を貫く、というところかもしれない。自動砲も秀れた能力を発揮したようだが、私は寡聞にして、自動砲そのものも、戦火のほども分からない。・・・≫


 私は、何度聞いても、この砲の種類について覚えられない^^;

 今回は、ちょいと「高射砲」というものが気になった。

 <Wikipedia>によると、こうある。

   
≪・・・高射砲(こうしゃほう)は、敵航空機の攻撃から自軍を護るために作られた火砲。普仏戦争で敵の弾着観測気球を狙い撃つため、プロイセン軍が用いた軽量砲架の小口径砲がその祖形[1]である。  1912年にドイツが野砲を改造して使用したのが近代的高射砲の始まりである。主に第二次世界大戦において高々度から侵入する連合軍の戦略爆撃機から軍事施設あるいは人口密集地の都市を守るためにドイツ軍は対空射撃管制装置ウルツブルク・レーダーと高射砲を組み合わせ有効な防空戦を展開した。  野戦において陣地あるいは装甲車両等の戦術目標を中・低空から攻撃する戦術爆撃機、急降下爆撃機に対しては高射砲ほどの大きな射高を必要とせず効果的に弾幕の張れる機関砲が利用された。  帝国陸軍では高射砲、帝国海軍では高角砲(こうかくほう)と呼んだ。また、最近は高々度を飛行する敵機を撃墜するには対空ミサイルが使用され、旧来の「高射砲」が出番を失ったためか、比較的低空で地上攻撃する敵機に対する砲を「高射砲」ではなく、「対空砲」と呼ぶことも多い。しかし「高射砲」「高角砲」「対空砲」はいずれも英語では同じ Anti-aircraft gun(対航空機砲、略称でAAG)であり、日本語訳におけるニュアンスの差でしかなく、基本的に同義である。・・・≫


 ノモンハンでは、この高射砲を、水平に使う局面があった訳だ。

   ◇

 くだんの『歴史と人物』を読み進めていくと、

     [体験手記 「高射砲でソ連戦車を撃つ」
               大原秀二(関東軍第六野戦高射砲隊長・当時陸軍砲兵大尉)]

 という、そのものズバリを記す記事があった。

 これによると、こんな一文がある。

   
≪・・・富田中尉、稲葉少尉らがかけ寄り、「八月二十日午後右後方から敵戦車が歩兵を伴って向って来た。この方向は放列より低いので反対脚を高め俯角射撃できるよう砲口前の積土も削り、先頭三両が全高を現わす五百から千メートルに来るのを待って、信管一~二秒の級梯射を浴びせた。弾は戦車の腹下で炸裂、黒煙を上げ、敵は慌てて逃げていった」と報告する。彼らの顔の輝きは今も忘れない。・・・≫


 ふ~む。

 私が気になるのは、その高射砲の貫通能力である。

 この手記を全文読んでも、そのスペックが記されてないんだよなあ。

 ・・・う~ん、私が気にしているのは、旧日本軍の砲弾は、敵の装甲に阻まれたとよく言われるが、果たして、現在の現地のロシアの戦車の残骸を見ると、穴がボコボコ空いているのが見て取れるという。

 私は、その穴が、高射砲という対戦車のイレギュラー砲で空いたものではないと考えたいのだ。

 つまり、通常の火砲で、敵さんの戦車装甲を貫いたものであって欲しいのだ。

 まあ、杞憂なんだけど・・・。

   ◇

     090113_215013[1] (3).jpg

 ところで、上の写真右の、松本零士の<戦場漫画シリーズ>を読んでいたら、正に、高射砲で戦車を撃つシーンがあったので見てください。

     090113_215225[1] (2).jpg
       「零距離射撃88」の回より。

 日本製の88㍉砲だそうですが、調べると、日本には、近い数値では、九九式八糎高射砲しかないぞえ・・・。

                                                        (2009/01/13)

【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第九十九回】 [ノモンハン考]

☆この、『ノモンハン美談録』から転載されている文章は、日付が記されていることが多い。

 その内、それらの日付順のデータ化を行ないたい。

 すると、ノモンハンの実像の一部が立体的に浮かび上がってくるだろう。

   ◇   ◇

 第三十四柱 陸軍上等兵 <石田 正雪>

    「ハルハ河の敵」

 七月十三日に猛攻撃を開始した中隊は、敵の頑強な抵抗を突撃に次ぐ突撃を以て打破り、第一線陣地、第二線、第三線と破竹の勢ひで突破した。翌十四日払暁には、息を次ぐ興へず、敵の最後とたのむ第四線防御陣地を見事突破した。

 しかし、この時には、我が軍も多大の犠牲を払つたので、一個中隊が一個小隊足らずに減つてゐた。が、その攻撃精神の凄さは少しも衰へなかつた。敵は十倍に近い兵力を持ちながら、この我が軍の気迫に押されて総崩れとなり、算を乱してハルハ河対岸に逃げ始めた。仮橋を押し合ひ、へし合ひながら墜落して溺れる者、漸く泳ぎ着く者など、その様子が、我が陣地から手にとるやうに見える。

 石田一等兵は、高地の砂の上に機銃を据ゑると、この○(注:字がどうしても分からない)軍の敵目がけて、物凄い掃射を浴びせ始めた。中る。中る。面白いやうに倒れる。昨日からの激戦に倒れた幾多の戦友の、仇を討つはこの時とばかり、石田一等兵は懸命に引金をひいてゐた。

 と、この時、一弾は飛来し、石田一等兵の右咽喉を貫き勢ひあまつて右肩をも貫通した。

「ウーム」と思はず唸り、思はず倒れかけたが、「何糞ツ」とばかり利かなくなつた右手の代りに、左手をかけて引金を引く。

「石田、大丈夫かツ?」 駆け寄る戦友に、力を籠めて引金をひいて見せたが、この時、血汐がガツと込み上げて来た。

「石田、代るぞ。手当を受けろ」

「まだまだ敵は河の手前に残つてゐる。残つてゐる間は、俺は射つ」と頑張つたが、もはや力尽きて、がつくりと伏せた。

 しかし、抱き起されながら、猶も彼は、

「天皇陛下   万歳   敵はハルハ河を   渡つたか   小隊長殿は   御無事か   分隊長殿ツ……」と、今はの間際まで、敵の退却を気にしつつ、壮烈な戦死を遂げたのであつた。

   ◇   ◇

                                                      (2009/01/04)

【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第九十八回】 [ノモンハン考]

☆明けましておめでとう御座います^^

 今年は、ノモンハン事件70周年です。

 私は、昨日、元日に、靖国神社に御参りしてきました。

 画像 002.jpg

 いつもは、家族の健康や、早く結婚できますように…、日本を見守ってください…、などとも、併せて祈るのだが、今年は、これだけでした。

  「ノモンハンの事実を描かせてください」

 なるべく、このブログに力を注ぐので、皆さん、どうかお力添えを!

 画像 004.jpg

   ◇   ◇

 第三十三柱 陸軍上等兵 <石毛 信次>

    「工機兵たる身を進んで戦闘に参加」

 石下一等兵は、八月上旬明石部隊に従つて出動、工機兵として修理班に配属され、中隊の車輛整備に寝食を忘れて努力した。

 隊は、十六日以来、ウズル水附近に進出同地の警備に当つてゐたが、二十二日朝九時頃、突如ハルハ河を渡河越境せる敵歩兵五六百、戦車五十余両の襲撃を受けた。

 折から我が第一線を守備してゐた小隊は、増援間に合はず、少数を以て鋭意反撃を加へたが、敵機械化部隊の猛撃はいよいよ激しく小隊の悪戦苦闘はその極に達した。

 当時同隊に在つて車輛整備に従事してゐた石毛一等兵は、この有様を見て憤激の血を湧かした。身は工機兵であつたが、率先志願して長保分隊に投じ、銃を執つて第一線の戦闘に参加した。

 激闘四時間、勇猛果敢な皇軍の反撃に阻まれて進み兼ねてゐた敵は、突如多数を頼んで鉄壁を誇る戦車群を先頭に猛攻撃を開始して来た。先頭の敵戦車は、見る見る分隊陣地十五六米の間に肉迫、戦車砲機関銃口から一斉に火を吐いて一挙に我が陣地を蹂躙せんとした。

 この時、陣頭に起つて奮戦してゐた石毛一等兵は、のしかかるやうに迫つて来た憎い敵戦車を、ぐつと睨みつけ、兼ねて容易の火炎瓶を鷲摑みにして立上がり、敵前に躍り出したかと思ふと、敵の巨体目がけて発止! と、叩きつけた。

 戦車が猛炎に包まれたと同時である。石毛一等兵の身体も、敵戦車砲弾を真向から浴びて、ぱつと飛び散る肉弾の華、国境の草原を鮮血に染めて、見るも壮烈に戦死を遂げたのであつた。

 その身は工機兵たるに拘はらず、機に臨み進んで死地に赴いた熾烈果敢なる戦闘精神は、天晴れ武人の亀鑑と云ふべきである。

   ◇   ◇

 今年も、英霊達の活躍を見守ってください。

                                             (2009/01/02)

【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第九十七回】 [ノモンハン考]

☆こんな本をネットオークションで手に入れた。

     『戦争と教育     ノモンハン・沖縄敗残兵の戦後   
                                          (森杉多著・近代文藝社)』
   戦争と教育.jpg

 ・・・左翼本です^^;

 でも、「ノモンハン」とタイトルで触れている限りにおいて、有益な情報も書いてあると信じて購入しました。

 報告をお待ち下さい^^(←でたっ! 得意の先送りッ!!^^;)

 ・・・では、『ノモンハン :地を這う神々の境地』です。

   ◇   ◇

 第三十二柱 陸軍上等兵 <犬養 朝仁>

    「旺盛なる犠牲的精神」

 八月二十四日九時頃、前進開始と共に、敵の火力物凄く、わが砲隊には、犠牲者が相ついだ。犬養一等兵は、右に左に駆けめぐり身を挺して死傷者の収容に看護に必死の力をつくした。

「オイ犬養、身を低く……」 分隊長が声をかけるが、一等兵は、

「ハイ……」と答へるだけである。擔架兵が自分の身を可愛がつてゐては、充分な働きは出来ない。

 十時三十分、敵前千米の辺りに達した時、突然小隊の陣地転換の命が下つた。言ふ迄もなく敵前の陣地転換は、非常に困難をともなふものである。而も迅速を要する。

 小隊は直ちに行動に移つたが、死傷者が続出した後なので欠員が多く、弾薬、砲の搬送が容易でない。この状況を見て、どうして黙つてをられよう! 犬養一等兵は、先ず戦死した戦友の背負つてゐた弾薬を自分で背負ひ、続いて砲の搬送に協力した。

 かうして小隊は、敵前八百米の地点まで前進した。何一つ遮蔽物とてない平坦地である。敵はよい目標とばかり、猛烈な集中火をあびせた。

「あッ……」 一等兵は、バツタリと倒れた。一弾が彼の胸部を貫いたのである。しかし一等兵は直ちにむつくりと立ち上ると、ふらつく足をふみしめ、

「何糞、やつたなあ……」と歯をくひしばり、前進をつづけた。背中には重い弾薬箱がある。十米、二十米、三十米………併し、人力には限りがある。生命の燈火は消えた。

 一等兵は、どうと倒れた。

   ◇   ◇

                                                    (2008/11/30)
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